[コラム]星の子
- 2015/07/09
- 21:02
我々は「星の子」であると言われる。我々の身体をつくる元素は、水素、酸素、炭素、窒素、リン、硫黄、鉄などであるが、このうち水素を除く他の元素は、138億年前の宇宙誕生後すぐには存在しなかった。水素やヘリウムが重力により集まり星が形成され輝く。この星が寿命を終えて燃え尽きようとするときに、鉄のようにより重い多くの元素が生成される。とりわけ重い星は、最後に超新星爆発を起こして、さらに重い元素を生成して宇宙空間に放出する。そして、我が太陽が生まれたときに、この星由来の元素から惑星も誕生した。それゆえ、我が地球も我々生命も星が作った元素でできている「星の子」なのである。
さて、我が地球は太陽を廻る惑星のひとつであるが、最近の研究は、太陽系内のみならず系外惑星の観測やコンピュータ・シミュレーションを用いて、惑星形成がどのように行われるのかを明らかにしようとしている。その結果、惑星は系の中心である星ができる際の残りのガスやチリが「原始惑星系円盤」を形成しそこからできることが理論面からも観測面からも確立されつつある。
私は少年時代に、原始太陽の周りをガスが取り巻いているような太陽系誕生の想像図というものを科学本で見た記憶がある。もう50年近くも前のことなので、当時はこの想像図の理論的根拠は乏しかったであろう。もちろん観測することはできなかった。太陽系の起源については、ドイツの哲学者イマヌエル・カントらが250年ほど前に唱えた星雲説から、200年間ほどはあまり進展はなかったのではあるまいか。
ところが1990年代に入り系外惑星が観測されるようになって、惑星の起源の研究は理論面でも観測面でも驚くべき進歩を遂げている。私は、アルマ望遠鏡が最近映し出した「おうし座HL星」の画像(公開)を見て息を呑んだ。そこには、これまで想像図でしか見ることのできなかった原始惑星系円盤の実物が、鮮やかな黄と朱のグラデーションで映っているではないか!もちろんこれは我が太陽系ではない450光年先の天体だが、46億年の時間を遡って太陽系が誕生しつつある現場を見ているのと等価である。人類は、ついに「星の子」誕生の現場を見たのである。
1968年、アーサー・C・クラークとスタンリー・キューブリックが若き日の情熱を燃やして作り上げた映画「2001年宇宙の旅」が公開された。木星に向かった宇宙船ディスカバリーは、搭載したコンピュータHALの反乱を受けて苦難の旅を続ける。ボーマン船長はモノリスという黒い方形の物体に導かれて宇宙の彼方に向かう。映画のラストシーンでは、年老いて死の床にある彼が再びモノリスに導かれて、突然、惑星に似た透明な球体中の胎児の姿で宇宙空間に浮かび、誕生したばかりと思われる惑星を見つめている。このラストシーンは、誕生したばかりの惑星に、これから生命が生まれて知的生命にまで育つことを暗示させる。
アルマ望遠鏡が映し出した原始惑星系円盤を見つめながら、これからどのような「星の子」たちが生まれ育っていくのかを想わずにはいられない。 (記:五等星)
さて、我が地球は太陽を廻る惑星のひとつであるが、最近の研究は、太陽系内のみならず系外惑星の観測やコンピュータ・シミュレーションを用いて、惑星形成がどのように行われるのかを明らかにしようとしている。その結果、惑星は系の中心である星ができる際の残りのガスやチリが「原始惑星系円盤」を形成しそこからできることが理論面からも観測面からも確立されつつある。
私は少年時代に、原始太陽の周りをガスが取り巻いているような太陽系誕生の想像図というものを科学本で見た記憶がある。もう50年近くも前のことなので、当時はこの想像図の理論的根拠は乏しかったであろう。もちろん観測することはできなかった。太陽系の起源については、ドイツの哲学者イマヌエル・カントらが250年ほど前に唱えた星雲説から、200年間ほどはあまり進展はなかったのではあるまいか。
ところが1990年代に入り系外惑星が観測されるようになって、惑星の起源の研究は理論面でも観測面でも驚くべき進歩を遂げている。私は、アルマ望遠鏡が最近映し出した「おうし座HL星」の画像(公開)を見て息を呑んだ。そこには、これまで想像図でしか見ることのできなかった原始惑星系円盤の実物が、鮮やかな黄と朱のグラデーションで映っているではないか!もちろんこれは我が太陽系ではない450光年先の天体だが、46億年の時間を遡って太陽系が誕生しつつある現場を見ているのと等価である。人類は、ついに「星の子」誕生の現場を見たのである。
1968年、アーサー・C・クラークとスタンリー・キューブリックが若き日の情熱を燃やして作り上げた映画「2001年宇宙の旅」が公開された。木星に向かった宇宙船ディスカバリーは、搭載したコンピュータHALの反乱を受けて苦難の旅を続ける。ボーマン船長はモノリスという黒い方形の物体に導かれて宇宙の彼方に向かう。映画のラストシーンでは、年老いて死の床にある彼が再びモノリスに導かれて、突然、惑星に似た透明な球体中の胎児の姿で宇宙空間に浮かび、誕生したばかりと思われる惑星を見つめている。このラストシーンは、誕生したばかりの惑星に、これから生命が生まれて知的生命にまで育つことを暗示させる。
アルマ望遠鏡が映し出した原始惑星系円盤を見つめながら、これからどのような「星の子」たちが生まれ育っていくのかを想わずにはいられない。 (記:五等星)
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