[コラム]世界3
- 2018/06/27
- 16:13
世界をどのように理解するか。私は、科学哲学者のカール・ポパーが唱えた世界の分類が気になっていた。ポパーは世界を3つに分類した。私の解釈では、世界1は我々を取り巻く自然界である。これには、岩石、微生物、植物、動物、タンパク質、空気、星、銀河、素粒子、宇宙などが含まれる。世界2は精神の世界で、意欲、思考、恐れ、喜び、好奇心、意識などが含まれる。そして世界3は人類の創造物の世界で、音楽、スポーツ、文学、社会・経済システム、テクノロジー、AIなど、もちろんサイエンスも含まれる。
さて、自然哲学と呼ばれていた17世紀のニュートンの時代から近代の自然科学が急速に発展し、世界1の探求が進められてきた。世界1の中に潜む自然法則を読み解き、いまや宇宙の始まりと万物の根源に迫ろうとしている。この最先端の取り組みのひとつに「超弦理論」がある。超弦理論は世界3に属するサイエンスの方法を用いて、これまで世界3に蓄積されてきた数学や自然科学の知見を活用し、さらに創造的な研究が続けられている。世界3の蓄積の活用とは、たとえば、ニュートンの運動方程式以来の作用原理、特殊相対性理論における時間と空間の統合、一般相対性理論による重力の概念、量子力学で確立した量子の概念、素粒子の標準モデルによるボソンとフェルミオンの概念、自然法則における対称性の性質、などである。これら世界3で積み上げてきた大前提に基づき、さらに新たな創造性を発揮して、振動する弦を基にして世界1を表現しようとしている。この理論は、これまで出来ていなかった重力を含む自然界の4つの力を統一的に説明することが可能であり、いわゆる統一理論としての期待が大きい。また、研究が進む中で、この超弦理論に基づく世界1は、10次元の時空(もともとの弦理論では26次元)を持つというように、理論の必然として次元が決まるという長所があり注目されている。
ところで、ポパーは3つに分けた世界をどう関係づけるかに悩んだと聞く。特に世界1(自然界)と世界2(精神世界)の関係についてあれこれ考えたらしい。ここでは私は、世界1(自然界)と世界3(人類の創造物)の関係について考えてみたい。古来人々は、見て感じて自然をありのままに理解しようとしてきた。そして、音楽や絵画や詩や幾何学が生まれた。しかし、17世紀頃に始まる近代科学は、目に見えない、感じることのできない自然法則を明らかにして自然界で起きる現象をうまく説明した。人々は自然界を、想像力を働かせてより深く理解するようになった。さらに20世紀に入ると、相対性理論や量子力学が描くそれまでの常識を超えた自然界の姿を、人々はさらに想像力を働かせて理解するようになったのである。自然界は近代科学の発展とともにその姿を大きく変えてきた。世界1(自然界)自身はそのままなのに、世界3(特にサイエンス)が変化することにより、人々の自然観(世界1の理解)が豊かになってきたのである。
さて、20世紀後半に起こり21世紀の現在も発展中の超弦理論である。この理論はこれまで人類が積み上げてきたサイエンスの成果をベースにして、さらに新たな発想と方法を駆使して世界中で研究が進められている。この理論は難解ではあるが、その成果は、人々が自然界をよりすっきりと理解するための説明を与えてくれるに違いない。世界1(自然界)はありのままにそこにあるが奥深く、それを理解しようとする世界3(特にサイエンス)の営みは続いていく。 (記:五等星)
さて、自然哲学と呼ばれていた17世紀のニュートンの時代から近代の自然科学が急速に発展し、世界1の探求が進められてきた。世界1の中に潜む自然法則を読み解き、いまや宇宙の始まりと万物の根源に迫ろうとしている。この最先端の取り組みのひとつに「超弦理論」がある。超弦理論は世界3に属するサイエンスの方法を用いて、これまで世界3に蓄積されてきた数学や自然科学の知見を活用し、さらに創造的な研究が続けられている。世界3の蓄積の活用とは、たとえば、ニュートンの運動方程式以来の作用原理、特殊相対性理論における時間と空間の統合、一般相対性理論による重力の概念、量子力学で確立した量子の概念、素粒子の標準モデルによるボソンとフェルミオンの概念、自然法則における対称性の性質、などである。これら世界3で積み上げてきた大前提に基づき、さらに新たな創造性を発揮して、振動する弦を基にして世界1を表現しようとしている。この理論は、これまで出来ていなかった重力を含む自然界の4つの力を統一的に説明することが可能であり、いわゆる統一理論としての期待が大きい。また、研究が進む中で、この超弦理論に基づく世界1は、10次元の時空(もともとの弦理論では26次元)を持つというように、理論の必然として次元が決まるという長所があり注目されている。
ところで、ポパーは3つに分けた世界をどう関係づけるかに悩んだと聞く。特に世界1(自然界)と世界2(精神世界)の関係についてあれこれ考えたらしい。ここでは私は、世界1(自然界)と世界3(人類の創造物)の関係について考えてみたい。古来人々は、見て感じて自然をありのままに理解しようとしてきた。そして、音楽や絵画や詩や幾何学が生まれた。しかし、17世紀頃に始まる近代科学は、目に見えない、感じることのできない自然法則を明らかにして自然界で起きる現象をうまく説明した。人々は自然界を、想像力を働かせてより深く理解するようになった。さらに20世紀に入ると、相対性理論や量子力学が描くそれまでの常識を超えた自然界の姿を、人々はさらに想像力を働かせて理解するようになったのである。自然界は近代科学の発展とともにその姿を大きく変えてきた。世界1(自然界)自身はそのままなのに、世界3(特にサイエンス)が変化することにより、人々の自然観(世界1の理解)が豊かになってきたのである。
さて、20世紀後半に起こり21世紀の現在も発展中の超弦理論である。この理論はこれまで人類が積み上げてきたサイエンスの成果をベースにして、さらに新たな発想と方法を駆使して世界中で研究が進められている。この理論は難解ではあるが、その成果は、人々が自然界をよりすっきりと理解するための説明を与えてくれるに違いない。世界1(自然界)はありのままにそこにあるが奥深く、それを理解しようとする世界3(特にサイエンス)の営みは続いていく。 (記:五等星)
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