[コラム]生物は柔らかい
- 2017/03/29
- 10:31
生物は、細菌であれ、植物であれ、我々人間を含む動物であれ、もちろん物質からできているが、その主なものはタンパク質という高分子である。タンパク質は、生物の体を構成し、酵素として代謝を促進し、栄養を貯蔵し運搬する。生物にとってタンパク質は、なくてはならないものである。生物の遺伝情報を保持するDNAは「生命の設計図」と呼ばれることがあるが、これは実際にはタンパク質の作り方を示す「タンパク質の設計図」とよぶべきものである。
近年、タンパク質の研究は急速に進み、タンパク質がどのような形をして、どのような機能を持つかを分子・原子レベルで解明しようとしている。そのために、小さすぎて(1ナノm~10ナノm)目に見えないタンパク質分子を見えるようにする新しい方法が実施されている。タンパク質を結晶化してX線でその形を捉える「X線結晶構造解析」、タンパク質を置いた基板表面の凹凸を針で測定する「高速AFM」、さらに、コンピュータ・シミュレーションによりタンパク質の動きを再現する方法も活用されている。これらの方法により、研究者はタンパク質の構造のみならず、その実際の動きまでも把握できるようになってきたとのことである。
このような研究者の方々の努力によって、我々一般市民はタンパク質に関する具体的なイメージを持つことができるようになった。タンパク質はアミノ酸が結合した高分子だが、その一次構造では、ひも状であり、二次構造では、らせんやシート状になる。さらに、三次構造、四次構造になると、タンパク質は精緻な折紙のように見事に折りたたまれて複雑な立体構造を示す。そして、この立体構造がタンパク質の働きを決めるというのであるから、自然が織りなす精妙さに感嘆せざるを得ない。我々の体の多くを形作っているものは、岩石や金属ではなく、タンパク質という柔らかさを感じるものであることが心地よい。
この柔らかい構造は、生物の進化の過程でも、その柔軟性を発揮してきたのであろう。遺伝情報のほんのわずかな変化がタンパク質の構造のわずかな変化に表現され、これがタンパク質の働きのわずかな違いを生んだのであろう。その変化の大半は進化に影響しなかったかも知れないが、その中のほんのわずかの有用な変化は、時間という協力者とともに生物の進化を継続させてきた。タンパク質は折紙のように柔軟にさまざまな形を生み出し、生存環境に応じて変化し、試行錯誤して地球上の生物の多様性を生み出してきた。
我々が今ここにいるのも、タンパク質で作られた生物の柔らかさのおかげだと思えるのである。 (記:五等星)
近年、タンパク質の研究は急速に進み、タンパク質がどのような形をして、どのような機能を持つかを分子・原子レベルで解明しようとしている。そのために、小さすぎて(1ナノm~10ナノm)目に見えないタンパク質分子を見えるようにする新しい方法が実施されている。タンパク質を結晶化してX線でその形を捉える「X線結晶構造解析」、タンパク質を置いた基板表面の凹凸を針で測定する「高速AFM」、さらに、コンピュータ・シミュレーションによりタンパク質の動きを再現する方法も活用されている。これらの方法により、研究者はタンパク質の構造のみならず、その実際の動きまでも把握できるようになってきたとのことである。
このような研究者の方々の努力によって、我々一般市民はタンパク質に関する具体的なイメージを持つことができるようになった。タンパク質はアミノ酸が結合した高分子だが、その一次構造では、ひも状であり、二次構造では、らせんやシート状になる。さらに、三次構造、四次構造になると、タンパク質は精緻な折紙のように見事に折りたたまれて複雑な立体構造を示す。そして、この立体構造がタンパク質の働きを決めるというのであるから、自然が織りなす精妙さに感嘆せざるを得ない。我々の体の多くを形作っているものは、岩石や金属ではなく、タンパク質という柔らかさを感じるものであることが心地よい。
この柔らかい構造は、生物の進化の過程でも、その柔軟性を発揮してきたのであろう。遺伝情報のほんのわずかな変化がタンパク質の構造のわずかな変化に表現され、これがタンパク質の働きのわずかな違いを生んだのであろう。その変化の大半は進化に影響しなかったかも知れないが、その中のほんのわずかの有用な変化は、時間という協力者とともに生物の進化を継続させてきた。タンパク質は折紙のように柔軟にさまざまな形を生み出し、生存環境に応じて変化し、試行錯誤して地球上の生物の多様性を生み出してきた。
我々が今ここにいるのも、タンパク質で作られた生物の柔らかさのおかげだと思えるのである。 (記:五等星)
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