[コラム]宇宙を満たすもの
- 2016/10/17
- 19:43
17世紀に開花したとされる近代科学は、生けるものもそうでないものも、すべての物質は百種類程度の元素の組み合わせによって成り立っていることを解明した。また、星空の観測により、遠方で輝く星々もわが太陽と同様に、水素やヘリウムなどの元素からできていることも分かった。さらに、太陽や星々からは、光や電波、X線などの電磁波が放射され、百億光年旅をして地球に届くものまで観測されるようになった。
20世紀半ばには、宇宙の始まりと言われるビッグバンの名残であるCMB(宇宙マイクロ波背景放射)が全天から地球に降り注いでいることが発見された。また、20世紀後半には、超新星爆発によるニュートリノが観測された。このように、宇宙は物質と放射により満たされていることが判明して、人類は自分の住み家がどんなところであるか、おおよその見当をつけることができて一安心したのである。
しかし、近年とんでもないことが提示された。先のCMBの精密な観測による宇宙初期の揺らぎの分布と、関連する理論やコンピュータシミュレーションの結果から、我々が既知の物質や放射は、全宇宙を構成する成分のわずか5%に過ぎないということになったのである。それでは、残りの95%は何であろうか。これが、ダークマター(およそ25%)とダークエネルギー(およそ70%)というのである。
ダークマターは20世紀半ば頃から、銀河の回転速度と質量との矛盾から予言されてきたものだが、それが我々の知る物質の5倍も存在するといわれても戸惑ってしまう。何しろ通常の物質や光とは相互作用を起こさないので、我々の身の回りに存在していても全く気付かない。しかし、銀河団の衝突の画像上に、吹き飛ばされるガスとは無関係に存在しているダークマターの場所を示す画像や、ダークマターによると推測される重力レンズ効果の画像を見ると、その存在を感じずにはいられない。
ダークエネルギーについては、これも20世紀後半に、さまざまな銀河内の超新星の観測により宇宙の加速膨張が発見され、これを説明するために導入されたものである。重力のように宇宙の膨張を減速させるのとは反対に働く斥力である。こちらは、宇宙の行く末を決める要因となる。宇宙はさらに加速膨張を増して最終的には宇宙は切り裂かれてしまうのか。はたまた速度が減じ膨張から収縮に転じるのか。現在、宇宙の歴史を通じた膨張速度の観測や理論面の研究が進められている。
既知の物質が宇宙を構成する成分のわずか5%である、という事実は、人類が17世紀以来400年かけて発展させてきた近代科学の成果が、「辿り来て未だ山麓」という感を抱かせる。しかし、あらためて考えると、この大宇宙の全容が高々数百年で解明されるわけがない。謎は謎を生み、謎解きは人類の歴史とともに続いていくのであろう。宇宙の成分の5%とはいいながら、そこから生命が誕生し、現在の多様な世界ができていることを想うと、宇宙のエッセンスがぎゅっと詰まった5%なのかも知れない。 (記:五等星)
20世紀半ばには、宇宙の始まりと言われるビッグバンの名残であるCMB(宇宙マイクロ波背景放射)が全天から地球に降り注いでいることが発見された。また、20世紀後半には、超新星爆発によるニュートリノが観測された。このように、宇宙は物質と放射により満たされていることが判明して、人類は自分の住み家がどんなところであるか、おおよその見当をつけることができて一安心したのである。
しかし、近年とんでもないことが提示された。先のCMBの精密な観測による宇宙初期の揺らぎの分布と、関連する理論やコンピュータシミュレーションの結果から、我々が既知の物質や放射は、全宇宙を構成する成分のわずか5%に過ぎないということになったのである。それでは、残りの95%は何であろうか。これが、ダークマター(およそ25%)とダークエネルギー(およそ70%)というのである。
ダークマターは20世紀半ば頃から、銀河の回転速度と質量との矛盾から予言されてきたものだが、それが我々の知る物質の5倍も存在するといわれても戸惑ってしまう。何しろ通常の物質や光とは相互作用を起こさないので、我々の身の回りに存在していても全く気付かない。しかし、銀河団の衝突の画像上に、吹き飛ばされるガスとは無関係に存在しているダークマターの場所を示す画像や、ダークマターによると推測される重力レンズ効果の画像を見ると、その存在を感じずにはいられない。
ダークエネルギーについては、これも20世紀後半に、さまざまな銀河内の超新星の観測により宇宙の加速膨張が発見され、これを説明するために導入されたものである。重力のように宇宙の膨張を減速させるのとは反対に働く斥力である。こちらは、宇宙の行く末を決める要因となる。宇宙はさらに加速膨張を増して最終的には宇宙は切り裂かれてしまうのか。はたまた速度が減じ膨張から収縮に転じるのか。現在、宇宙の歴史を通じた膨張速度の観測や理論面の研究が進められている。
既知の物質が宇宙を構成する成分のわずか5%である、という事実は、人類が17世紀以来400年かけて発展させてきた近代科学の成果が、「辿り来て未だ山麓」という感を抱かせる。しかし、あらためて考えると、この大宇宙の全容が高々数百年で解明されるわけがない。謎は謎を生み、謎解きは人類の歴史とともに続いていくのであろう。宇宙の成分の5%とはいいながら、そこから生命が誕生し、現在の多様な世界ができていることを想うと、宇宙のエッセンスがぎゅっと詰まった5%なのかも知れない。 (記:五等星)
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