[コラム]柿食へば
- 2021/01/05
- 15:35
柿食へば鐘が鳴るなり法隆寺 言わずと知れた正岡子規の名句である。私もこの句が大好きだ。まず視覚である。柿は大振りで形は整っていないが、秋の日に照らされて光沢を帯びた色合いが目に浮かぶ。また、手に取ると重く滑らかな触覚が感じられただろう。次は嗅覚と味覚である。がぶりと噛みついた瞬間、柿特有の香りと味が食感とともに口中に広がり、子規は思わず微笑んだことだろう。さらに子規の聴覚は鐘の音を捉え、それが先...
[コラム]水と生物
- 2020/11/10
- 16:10
生物を形作るのに必要不可欠な物質といえば、核酸とタンパク質だというのが今や常識である。生物はDNAやRNAなどの遺伝情報を担う核酸と、この情報をもとにアミノ酸をつないで作られるタンパク質の働きで成り立っている。それなら実際に生物を構成する物質で重量比として最も大きいのは核酸やタンパク質かといえばそうではない。多くの動植物で最も多い物質は「水」である。人の場合、子供で体重のおよそ70%、大人でも60%ほどに...
[コラム]宇宙は無限・・・
- 2020/08/08
- 19:42
昨年2019年のノーベル物理学賞は、宇宙論のピーブルス、および太陽系外惑星の第一発見者であるマイヨールとケローが共同受賞した。私はそろそろ系外惑星発見にノーベル賞が与えられると予想していたので的中してうれしかった。しかしそれ以上に、ピーブルスの名前を聞いてうれしかった。その名前は40年以上も前の学生時代の風景を懐かしく思い出させてくれたからである。 私はあまり勉強熱心な方ではなく授業に出るのも...
[コラム]物質と生物を分かつもの
- 2020/07/14
- 16:35
ダーウィンが「種の起源」を出版してから160年以上が経った現在、生物の進化に関連する研究は大きく発展した。そして、各生物のDNAの比較研究などから進化の系統樹が作られ、およそ40憶年に渡る生物進化の歴史が目に見えるようになった。この系統樹には、我々ホモ・サピエンスを含め、現在の地球上に存在する生物から過去に遡ることができる。そうすると系統樹の最初の方には、現存するまたは絶滅した数えきれない生物たち...
[コラム]地上の星
- 2020/04/26
- 10:38
子供の頃、水平線から昇る朝日を見て、どうして太陽はあんなにまぶしく輝いているのだろう、と思った。また、田舎の夜空を眺めながら、こんなに多くの星々がどれもなぜ光っているのだろう、と不思議だった。太陽が星々と同じ恒星と呼ばれる仲間だと知った後でもこの疑問は残った。「核融合」という言葉を知ったのは中学生の頃だっただろうか。もちろん恒星が光エネルギーを核融合によって生み出している、ということは数十年前に...